



新潟県新発田市および聖籠町の砂地で採れるブランド里芋のことを砂里芋(さりいも)といい、10月中旬頃から本格的に収穫が始まります。今回は収穫を約1か月後に控えた圃場を見学させてもらいました。一面に青々とした葉が広がっていますが、葉が枯れ始めた頃が収穫のタイミングなのだそう。一般的に里芋は水を蓄えやすい粘土質の畑で栽培されますが、海に近い新発田の土はサラサラとした砂地です。水はけのよい砂地は、水分を好む里芋にとって過酷な土壌だと言えます。そのストレスを受けることによって芋が糖分を蓄えるので、砂里芋は甘みや旨みが強く、身が締まってとてもおいしいのだとか。キメ細かくねっとりとした食感に加えて、中の色が白く美しいことも砂里芋の特長です。




里芋のぬめりには、水溶性食物繊維の一種であるグルコマンナン、ガラクタンなどが含まれています。これらは、消化吸収を高めて胃腸の働きを活性化させ、腸内環境を改善させる効果が期待できます。また、タンパク質の分解を助けるビタミンB6や糖質をエネルギーに変える働きをサポートするビタミンB1など、ビタミンB群も豊富。そのほか、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど体に欠かせない栄養素も多様に含んでいます。また、芋類の中で里芋はもっともカロリーが低いため、摂取カロリーが気になる人におすすめです。
新聞紙などに包み、風通しの良い日陰に置いておくと日持ちもよいので、日々の食事にぜひ取り入れてみてください。







「砂里芋は“のっぺ(新潟県の煮物のような郷土料理)”で食べることが多いですね。子芋の周りにできる孫芋が柔らかくておいしい。丸みがあり、切り口がひとつしかないのが孫芋ですよ」と、おいしい里芋の見分け方を教えてくれた小林さん。砂里芋の生産に本格的に取り組むようになったのは18年ほど前からだそうです。「砂質土のため水やりの手間がかかるし、連作ができない。さらに肥料も流れやすいことから、有機質肥料の追肥の必要があり、苦労は多いんですよ」と、話してくれました。生産にコストがかかるため、売値も高くなってしまい、生産を始めて数年は売れ行きがあまり振るわなかったといいます。それでも砂里芋のおいしさを信じて生産を続け、部会の人数は3名から19名へ、全体の耕作面積は0.7ヘクタールから23ヘクタールにまで成長しました。令和4年には新潟県の日本農業賞・県知事賞を受賞、また同年、新潟県で初めてJGAP(※)団体認証を取得するなど、部会が一丸となりブランド里芋としての価値を高めるべく取り組んでいるのです。
※食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証



新発田といえば、新潟の奥座敷とも呼ばれる月岡温泉が有名。美肌効能があるとされる硫黄成分濃度の高さで知られています。硫黄含有量は日本でもトップクラス。硫黄泉としては珍しい弱アルカリ性で、肌に優しい硫黄泉として親しまれてきました。普段は入浴剤と間違われるほど美しいエメラルドグリーン色をしていますが、季節や天候などの気象条件により乳白色などに色が変化する場合もあるのだとか。
また、温泉地での楽しみといえば温泉街の散策です。新潟の地酒を集めた酒店で、試飲をしながら日本酒を購入したり、お酒に合うおつまみを探してみたりするのも一興。趣向を凝らしたお店が並ぶ中には、せんべいや米粉スイーツを自分で焼いて楽しめるところもあるので、米どころ新潟の味と、良質な温泉を月岡で堪能してみてはいかがでしょうか。
