



梅の名産地として知られる和歌山県。南高梅が有名ですが、とても希少な赤紫色の小梅があることをご存知でしょうか。JA紀南の管内だけで生産・販売ができるブランド小梅「パープルクィーン」。JA紀南管内における2023年の南高梅の生産量がおよそ2万1,762トンなのに対し、同年のパープルクィーン生産量はおよそ65トンと、大変希少な梅だということがわかります。そんな貴重なパープルクィーンは、5月下旬から6月上旬の2週間程度で一気に収穫期を迎えます。パープルクィーンは、実を食べるよりも梅ジュースや梅酒にして味わうのが一般的です。飲み頃になると、他では類を見ないような鮮やかな赤紫色に目を奪われること間違いなし!香りが強く、甘みの強い南高梅などに比べてさっぱりとした飲み口も特徴的で全国に数多くのファンを抱えています。




パープルクィーンはポリフェノールの一種であるアントシアニンが一般的な梅よりも多く含まれており、そのため濃い赤紫色に色づいています。アントシアニンは強い抗酸化作用を持っていることが特徴で、アンチエイジングや眼精疲労の回復に効果があるとされている栄養素です。また、一般的な梅に含まれているクエン酸やリンゴ酸には疲労回復効果が、カリウムには水分代謝を促し、むくみを軽減する効果などが期待できます。







祖父の代から梅の栽培を家業としてきた前田さん。パープルクィーンの生産を続けるなかで特にこだわってきたのは、いかにきれいな色をつけるかということなのだそうです。重要なのは、1本の木に実る梅にまんべんなく日の光を当てること。剪定によって全体のバランスを調整する職人技に加え、タイベックシート(透湿・防水・遮熱ができるシート)を敷くことで光を反射させ、すべての実が赤紫に色づくように工夫しています。また、収穫面では急な斜面でハシゴを使って、高い枝にある実をすべて手作業で収穫しているため、安定した出荷に向けて苦労は絶えず、日々努力を重ねているそうです。「たくさんの人にパープルクィーンを使った梅ジュースや梅酒を作る楽しみを感じて欲しい。うちではサワーにして飲むのが定番です。少しずつ色が変化していくので育てている実感があっていいですよ。家に帰ってから、瓶をひっくり返して混ぜるのが毎日の楽しみです。一度やってみてもらえば、パープルクィーンの美しさとおいしさのとりこになると思いますよ!」



パープルクィーンの産地である西牟婁郡や田辺市は、和歌山県の紀南エリアに分類され、人気リゾート地の南紀白浜へのアクセスも良好です。白浜には、臨海浦の南海上に浮かぶ小島の円月島(正式名称・高嶋)があり、島の中央にある、波によって削られてできた大きな丸い穴越しに夕日が沈んでいく様はまさに絶景。夏は18時30分頃、冬は16時30分頃の日没前に訪れるのがおすすめです。円月島から田辺湾をはさんで真向かいには天神崎があります。この岬は、緑豊かな丘陵部と透明度の高い海、それをつなぐ平らな岩礁からなり、市民たちが資金を出し合うナショナル・トラスト活動によって維持されてきた和歌山の自然を堪能できる場所です。また条件がそろえば、岩礁に溜まった水に空が反射して、ウユニ塩湖のような幻想的な景色が見られる人気スポットでもあります。150~140cm程度の潮位になる引き潮のタイミングを狙って、訪れてみてはいかがでしょうか。
