



福岡県南部に位置する朝倉市は、柿の一大産地として知られています。その朝倉市の新たな名物「博多とよみつひめ」は福岡県でしか栽培されていないオリジナル品種のいちじくです。その特長は、一般的ないちじくと比べてとてもジューシーでなめらかな食感が楽しめること。そして糖度が高く、蜜のように甘いのも魅力です。
いちじくは1本の幹に4mほどの太い枝が伸び、そこから生えた立木には、お尻を天に向けるように実がなります。丸く大きく熟すにつれて実が垂れ下がり、皮が赤く染まってたっぷりと甘みを蓄えたときが収穫のタイミング。実が柔らかい上に皮に傷がつきやすく繊細なため、収穫はすべて手作業で行われています。




ビタミンやミネラルも豊富ないちじくですが、代表的な栄養素が食物繊維です。食物繊維には水溶性と不溶性があり、便秘解消など腸の働きを良好にするにはバランスよく摂ることがのぞましいとされています。いちじくに含まれている食物繊維は理想に近いバランスだと言われおり、いちじく特有のたんぱく質分解酵素「フィシン」も豊富に含まれているので、食事の消化や吸収を促進する作用が期待できます。そのほか、老化の原因となる活性酸素を除去する働きがあり、アンチエイジングに効果的といわれるポリフェノールの「アントシアニン」、女性ホルモンと同様の働きをする「植物性エストロゲン」も含まれているなど、いちじくは女性にとって嬉しい効果が期待できます。







「どれだけ甘いか、食べたら違いがわかるけん、まずは食べてみてん」と笑顔を見せるのは、とよみつひめの生産をはじめて14年ほどになるという佐藤敏久さん。以前から柿を主力に、とよみつひめの生産もしていましたが、水害により柿の圃場を縮小することになり、そこからとよみつひめの栽培面積を増やしたそうです。「いちじくは摘果もなく、実がつけば熟すまで手がかからん。柿と違って手が届く高さで収穫できるのもよかですね」と、とよみつひめの生産について語ってくれました。満べんなく日が当たるように工夫をして剪定をしたり、繁忙期には休みなく毎日収穫をしたりという苦労もあるそうですが、おいしさにムラのないいちじくを生産することを第一に、丹精込めて日々栽培しているそうです。味のチェックもかねて、自宅でも毎日いちじくを食べているという佐藤さん。「六つ切りにし、ヨーグルトをかけて、毎朝食べています。皮が薄くて柔らかいから皮をむかずに食べられて手軽だし、栄養も摂れていいですよ!」


朝倉市には、「朝倉の揚水車群」として国の史跡に指定されている水車があります。菱野の「三連水車」をはじめとする水車群は、誕生から約230年の歴史をもつ自動回転式の重連水車で、実働しているものとしては日本最古の水車です。5年ごとに地元の水車職人によって作り替えられ、江戸時代からの伝統を継承しています。毎年6月17日に水神社境内下にある水門が開門されると、9月下旬まで水車群が稼働し、筑後水系の豊かな水を農地に届けます。生活道路の脇にある水車は地元の人たちにとっては身近な存在であり、夏を知らせる風物詩としても愛されています。水車が水を汲む音が涼しく響くのどかな景色は、まるで昔話の世界にいるかのような優しい気持ちにさせてくれます。
