



岩手県沿岸部の久慈地域は県内随一の売上高を誇る、ほうれんそうの産地です。中でも冬場にはマイナス15度まで気温が下がることもある普代村は、太平洋に面しており、日当たりが良好なことから雪が降っても積もりにくく、湿度が上がらないという特徴があります。その環境を生かし、11月から2月にかけて出荷されているのが「寒じめほうれんそう」です。厳しい寒さの中で育つ寒じめほうれんそうは、凍ってしまわないよう葉や茎に糖分を蓄えるため、糖度が高く、まろやかな風味が味わえます。出荷の基準は糖度8度以上とされており、メロンに匹敵する14度にもなることがあるそうです。また、一般的なほうれんそうは播種から収穫まで1カ月程度かかりますが、寒じめほうれんそうはその3倍の時間をかけてゆっくりと成長することで、肉厚ながら柔らかい葉に育ちます。えぐみも少なく、しゃぶしゃぶなど軽く湯がいて食べる調理が特におすすめです。




寒じめほうれんそうはゆっくりと時間をかけて育つため、栄養素がギュッと凝縮されています。特に豊富に含まれているのは、抗酸化作用が非常に強く、目の健康を守ってくれる機能性関与成分のルテインです。JA新いわての寒じめほうれんそうは、岩手生物工学研究センターによる研究を経て、2019年に機能性表示食品の認定を受けました。そのほか、緑黄色野菜であるほうれんそうおなじみの栄養素であるβ-カロテン、ビタミンやミネラルもたっぷりと含んでいます。






中村さんの祖父は農業を営んでおり、子どものころからその手伝いをしていたことで農家を目指すようになりました。大学では農業を学び、卒業後に新規就農しました。それから9年の月日が経ち、「いいことも悪いことも、やったことが全部自分に返ってくるのが農業の魅力」と話す中村さん。特にこだわっているのは土づくりだと言います。「2月に最後の収穫が終わったら、堆肥をまいて土壌を整えます。“野菜を育てるのは農家ではなく土”という先輩の言葉に感銘を受け、土が野菜が育てる手伝いをしているという心得で生産を続けています」と、生産にかける思いを語ってくれました。寒じめほうれんそうは少しでも多く陽が当たるよう、地面に葉を広げて成長するため、寒い中、1株1株手作業で収穫しなければならず、袋詰めにも大変手間がかかるそうです。それでも、そのおいしさを多くの人に知ってもらいたいという熱い思いが中村さんの原動力となっています。「ハウス2つ(10アール)からスタートし、今ではハウスと露地を合わせて40アールまで圃場を拡大しました。雪の重みでハウスが潰れてしまうなど、様々な苦労もありましたが、県内一のほうれんそう生産者になることを目指して、これからも丹精込めて作り続けていきます!」



岩手県沿岸で、大昔には山伏が舞っていたという鵜鳥神楽。春を告げる祭りとして、今日まで受け継がれてきました。鵜鳥神社の神霊を移した獅子頭を権現様とした神楽で、国指定重要文化財に指定されています。普代村の鵜鳥神社から始まり、久慈市までの「北廻り」、釜石市までの「南廻り」を隔年で、毎年1月から3月まで巡業します。真っ赤な面が印象的な山の神が登場する舞や、般若の面姿の鬼となった岩長姫と戦う「日本武」の舞、鮮やかな水色の衣装をまとった恵比寿様の舞などが観客を楽しませます。旧暦4月8日に行われる鵜鳥神社例大祭では、朱塗りの神楽殿で奉納される鵜鳥神楽を見ることもできます。
