海沿いの傾斜地で日差しをたっぷり浴び、1年以上の年月をかけて大きく育つ河内晩柑。ほのかな苦味が特徴で、和製グレープフルーツともいわれています。柑橘生産が盛んな宇和島地区では、「宇和ゴールド」という呼び名で親しまれています。実り始めた果実が収穫されるのは、約1年後。また、時期によって味の変化が楽しめるのも河内晩柑の魅力のひとつ。3~4月ごろに収穫される果実は身が締まって、程よい酸味がありさわやかな味わい。5月以降に出荷されるものは甘みが増し、みずみずしい果実になっていきます。
一般的な柑橘類と同様に、果肉から疲労回復に役立つクエン酸や免疫力アップが期待できるビタミンC、体内の余分水分を排出するカリウムなどを豊富に摂ることができる河内晩柑。さらに、皮の白い部分にも多くの栄養素が含まれています。果肉だけでなく、砂糖漬けやマーマレードなど皮まで食べる工夫をすると、より多くの栄養素を摂ることができます。
青い海を背景に、青々とした葉の合間から黄色い果実がのぞく、絵画に描かれた風景のような圃場を案内してくれたのは、南予果樹同志会の長岡隆浩さんです。JA職員として指導員を務めた後に家業を継ぎ、15年ほどになるといいます。農業が身近にあった長岡さんも、実際に就農してみると多くの苦労がありました。「河内晩柑は寒波の年にはせっかく育った果実がダメになってしまったり、収穫間近になって日照量が多すぎると、果実の日当たりのよい部分が日焼けして変色して見た目が悪くなったり、どうしても自然には勝てないですね。実ってから収穫するまでの期間が長い分、そういったリスクはほかの柑橘よりもあります」と長岡さん。一方で、これまでの知識や経験を生かして、作業の効率化を目指しているそうです。「河内晩柑は収穫時期が長いですし、剪定や老木樹の伐採などを行なうことで、収穫の際の動線を確保して、効率よく収量を確保できるように努めています。よりたくさんの人に河内晩柑を食べてもらえるようにしたいです」と話します。そんな長岡さんがおすすめする河内晩柑の味わい方は焼酎の果汁割り。「焼酎2、果汁8の割合で、水や炭酸を入れずに作るんです。酸味と苦味のバランスが絶妙でお酒が進みますよ」とお茶目な笑顔を見せてくれました。
宇和島市でぜひ訪れたいのが、海に面した広大な斜面に石を階段状に積み上げた段々畑が広がる「遊子水荷浦の段畑」です。幅1m、高さ1.5mほどの圃場では馬鈴薯が栽培されていますが、畑地というのが一見信じられないくらい、驚くほどの急勾配になっています。ふもとから空を見上げると、畑が天まで続いているように見えることから、「耕して天に至る」と形容されています。国の重要文化的景観に選定されているほどの絶景を堪能してみてはいかがでしょうか。