大自然に囲まれた奥出雲地区に、全国でもわずか1%程度という鶏の平飼い放牧を行っている養鶏所があります。4500羽ほどの鶏たちは、放牧場へ出たり、鶏舎の中で砂浴びをしたりとのびのびと暮らし、丈夫で大きな鶏に育っています。飼料は栄養バランスと健康を考えて、おからや酒粕、野菜のくずのほか、出雲そばの切れ端、宍道湖産のしじみ殻や隠岐のかき殻など、出雲産の食品残さを取り入れ、これが環境負荷を減らす取り組みにもなっています。また、卵の味に直結するという飲み水は、中国山地の地下約100mから汲み上げるきれいな水を与えています。
こうした努力により、うまみ成分がたっぷり含まれ、白身の独特のにおいが少ないため、卵が苦手な人でも「この卵なら食べられる」というほどおいしい卵が生まれるのだそうです。
幅広い栄養素を含み、体に必要とされる代表的な栄養素のうち、ビタミンCと食物繊維以外のほとんどを摂ることができるとされる卵ですが、なかでもたんぱく質を構成するアミノ酸のうち、体内で生成できない9種類の必須アミノ酸がバランスよく含まれています。「完全栄養食」ともいわれる卵の中でも、「彩り天佑卵」には、一般的な卵に比べてうまみ成分のグルタミン酸が約2倍!疲労回復効果などが期待できるアミノ酸の一種・アルギニンや、体内で合成できない必須アミノ酸のリジンも豊富な含有量を誇ります。
500年以上前からこの地でたたら操業を行なってきた、たなべたたらの里。一見結びつくことがなさそうな養鶏と製鉄ですが、どちらも山や自然の恩恵を受けて営むという共通点があるそうです。「山を切り崩して砂鉄を収集する一方で、製鉄に欠かせない木炭を作るために森林を育てるなど、自然との共生を大切にしてきました。養鶏も同様です。鶏さんたちには出雲の恵みたっぷりの飼料を与え、鶏糞が混ざり合ったもみ殻やそば殻を発酵させた堆肥は農業へ還元しています」と堀さん。
高級志向の首都圏にあるスーパーなど引く手あまたの「彩り天佑卵」ですが、サイズが大きすぎるものや小さすぎるものは、自社工場でスイーツやマヨネーズなどの材料に。ロスをなるべく減らす仕組みをつくり、卵ひとつひとつに向き合っています。
「放牧場につながる鶏舎の扉は毎朝7時半に開けるのですが、害獣が心配で6時には出勤しています。冬場は雪深く通勤も大変なので、事務所に泊まり込みですね…(笑)」と、堀さんは鶏たちへの愛情たっぷりの優しい笑顔を浮かべます。
そんな堀さんおすすめの食べ方は、やっぱり卵かけごはん。「黄身のうまみはもちろん、臭みのない白身のおいしさを感じてもらえると思います!」
砂鉄と木炭を用いて日本刀などの材料になる純度の高い鉄(玉鋼)を作る、たたら製鉄が盛んに行われていた奥出雲地方。雲南市吉田町では「菅谷たたら山内」として、大正10年まで使われていたたたら御三家のひとつ田部家のたたら場や職人の住居などを一般公開しています。ここでは、全国で唯一現存する土炉の覆屋である高殿を含む、国指定重要有形民俗文化財の数々を見学することができます。高殿の中で存在感を放つ、大きな土炉は製鉄の要です。山を切り崩し採取された砂鉄と木炭を土炉の中で燃やし、三日三晩ふいごで風を送り続けて熱して不純物を取り除きます。ちなみに、ふいごを踏む担当を番子といい、交代で作業を続けたことが“代わり番子”という言葉の語源になったそうです。
火が噴き出す土炉の近くで、職人たちが危険をともないながら過酷な作業をし、鉄を生み出していたことが日本の発展につながっている。日本遺産にも選出されている奥出雲のたたら場は、そんな歴史を感じることができる貴重な場所です。